世界恐慌、大戦への足音

世界恐慌に対し、各国はどのような対応を取ったのかを確認しましょう。
世界恐慌は、第二次世界大戦へつながる重大危機です。
アメリカから始まった世界恐慌とは
アメリカ空前の好景気

経済が破たんしている状態を恐慌と言います。
世界的な経済破たん。
それが世界恐慌です。
始まりはアメリカの経済不況した。
実は、世界恐慌が始まる前のアメリカは、空前の好景気でした。
なぜなら、ヨーロッパを主戦場とし、世界は第一次世界大戦の真っただ中だったからです。
ヨーロッパ各国は、主戦場であったため製品生産、農作物栽培などが行き届かなくなってしまいました。
それらの大半をアメリカからの輸入せざるを得なくなったのです。
するとアメリカとしては経済的に潤うことになります。
こうしてアメリカの好景気が始まりました。
さらに、大戦後は、ヨーロッパ各地の復興支援をアメリカ企業支援し、さらにアメリカの景気は良くなります。
主婦や子供でさえも、アメリカ企業の株を買えば儲かる状況でした。
お祭り騒ぎで浮かれていたアメリカ国内に、ある日突然起きた出来事。
それがニューヨーク株式市場での株価大暴落です。
ウォール街の悪夢













アメリカ企業の株は世界中に出回っていたので、こうしたことが世界各国で起こってしまったのです。
これが世界恐慌です。
失業率が4人に1人となり、悲しいことに自殺者も急増しました。
世界恐慌への各国の対策
ニューディール政策

ニューディール政策の大きな目標は、大量に発生した失業者を救済することです。
失業者に働く機会を与えるため、大々的な公共事業政策を打ち出します。
道路工事やダムの建設です。
失業者を雇い、それらの公共事業に従事させました。
失業者達を救済したことで、徐々に国内の経済も回復していきました。
ブロック経済政策

外国を締め出し、自国のみで経済活動を完結させる。
それがブロック経済政策です。
国内の産業を守ることが目的です。
国内の製品や農産物が売れれば、国内の企業や農業も潤い従業員の生活も安定します。
外国製品の流入を防ぎ、国内だけの取引にすれば、国内産業を守れるという理屈です。
しかし、このブロック経済政策には条件があります。
輸出輸入に頼らない国だけが取りうる政策です。
イギリスやフランスは植民地を多く支配していました。
自国と植民地だけで経済活動を完結できる。
これがブロック経済政策を行える条件です。
なぜソ連は世界恐慌の影響を受けなかったのか

ソ連は、世界初の社会主義革命(ロシア革命)を成功させたばかりでした。
長引く革命の影響もあり、ソ連の技術はヨーロッパ諸国の技術に比べ、相当な遅れをとっていました。
ソ連は五か年計画を打ち出します。
他国に追いつくために、国家管理の下経済活動を統制し、重工業や農業の生産性の向上を図りました。
「5年で他国に追いつく」
これが五か年計画です。
個人や企業任せの経済活動スタイルの他国とは違い、国家介入型のソ連は、全く世界恐慌の影響を受けずに済みました。
ファシズムの台頭

全体の目的のために生きること
自己を犠牲にし、国家全体の目的遂行のために生きること。
それが全体主義思想でありファシズムです。
ファシズムの語源は、イタリアのファシスト党です。
イタリアのファシスト党のムッソリーニは、軍事的劣勢と世界恐慌の困難を乗り越えるには国家総動員で立ち向かわなければならないと主張しました。
アメリカやイギリスに対抗していくには、個を捨て、国家のために個人が団結しなけらばならないと主張したのです。
そこにはもはや民主主義が入る余地はありません。
しかし、不安や失望の中にある民衆は、何者かにすがりたくなるものです。
民主主義を捨ててもなお、国家を導いていく強いリーダーを望んだのです。
その強力なリーダーがムッソリーニでした。
ムッソリーニの指導で、イタリアではファシズムが加速していきます。

ドイツとイタリアの世界恐慌

イタリアの世界恐慌対策





ドイツの世界恐慌対策



賠償金の返済のために、ドイツが行ったのは紙幣を大量に発行することでした。
その結果、お金の価値が極端に下がり、ハイパーインフレーションが起こりました。
インフレーションとは、物の価値があがりすぎる、もしくはお金の価値が下がることを意味します。
100円で買えていたパンが、1000円出さないと買えない。
これがインフレーションです。
ハイパーインフレーションはほとんどお金の価値が無くなってしまうほどの事態です。
実際、ドイツの街並みは、大量に発行し過ぎたお金であふれえり、子供たちは折り紙にして遊んだりする始末でした。
そのような中、ドイツを襲ったのが世界恐慌です。
失業者があふれ、絶望的な状況をドイツ国民は迎えます。


絶望感ただようドイツ国民の前に現れたのが、アドルフ・ヒトラーです。
ヒトラーが率いるナチス(国民社会主義ドイツ労働者党)は、ドイツ国民の絶大な人気を背景に躍進していきます。
イタリアのようにファシズムを巧みに利用し、ドイツ民族の優秀さを主張し、ユダヤ人を迫害しました。
ヒトラーの演説は素晴らしく、聞いている誰もが陶酔(とうすい)したと言います。
さらに行動力もあるヒトラーは、世界恐慌やベルサイユ条約の難題を次々に解決していきます。
失業者問題を解決し国家経済の立て直しに希望が見えました。
当然国民の支持はより一層多くなります。
ベルサイユ条約を無視し、軍備拡張を行うドイツに対し、各国は非難しました。
ヒトラーはすんなり国際連盟を脱退し、さらなる軍備拡張を目指していきます(1933年)
イタリアとドイツ、そして日本



アメリカのニューディール政策は、失業者救済のために大規模な公共事業を行いました。
失業者を雇うことで、消費活動を増やし、経済を活性化しようとしたのです。
さらにアメリカは国土が広く、資源や農作物なども豊富にあります。
言わば、他国に頼らず自国内で生産し、販売、消費など、自国内だけで完結できてしまう強みがありました。
ある程度消費活動が戻ってくれば、何とか恐慌を乗り切れたのです。
イギリスやフランスはアメリカに比べれば小国です。
アメリカのようには行きません。
しかし、これらの国は海外に多くの植民地を持っています。
自国と植民地だけで経済活動を行うことが可能です。
植民地には資源も農作物も豊富にあります。
外国を経済活動から締め出し、国内産業を守り失業者を救済すれば、あとはアメリカと一緒です。
このように自国と植民地以外を締め出す(ブロック)する経済政策が、ブロック経済政策です。





