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ロシア革命と社会主義(前編)

資本主義

私達日本人からすれば、社会主義や共産主義という言葉は、あまりピンとこないものです。
日本は典型的な資本主義国家であり、また世界の経済システムは、ほとんどが資本主義体制を採用しているからです。

資本主義とは、資本家が労働者を雇い、利益を得ていくシステムです。

わかりやすく言えば、会社の社長(資本家)が従業員(労働者)に賃金を払い、労働者は自分の労働力を提供します。
日本の主流を占める、サラリーマンを例に例えると、わかりやすいと思います。

資本家は会社を大きくしようとすれば、自由に大きくできます。
労働者を増やし利益をさらにあげることもできます。
もちろん労働者も実力があれば、人よりも多く賃金を得ることは可能ですし、自ら出資し、資本家になることも可能です。
資本主義は実力主義、自由主義とも呼べるでしょう。

日本で生活していると、当たり前のように感じてしまう資本主義経済ですが、実はこの資本主義経済には最大の欠点があります。
それが、貧富の差です。

実力がある労働者ならば、多くの賃金を得ることも可能です。
しかし、ほとんどの労働者は低い賃金で日々仕事と生活を繰り返しているのが現実です。
一部の資本家だけが富を得て潤っていく。それが資本主義経済の最大の欠点です。

アメリカは特に貧富の差が激しいです。
大豪邸が並ぶ街並。しかし、そこから少し歩けばスラム街が広がり、犯罪も絶えません。
幼い子供でさえ路上生活を強いられる。それが資本主義の最先たるアメリカの現状です。
日本では考えられないような貧富の差が、アメリカや他の先進国には確かに存在するのです。
この労働者の劣悪な労働環境の中で、労働者のための社会を主張したのがカール・マルクスです。

カール・マルクス

カール・マルクスはプロイセン(ドイツ)出身の哲学者です。
資本主義は高度に発展し、やがて立ち行かなくなる。
それがマルクスの主張です。
立ち行かなくなった資本主義はどこに向かうのか。
行きつく先は社会主義であり共産主義です。
後の社会主義運動に大きな影響を与えたマルクスの思想をマルクス主義と呼びます。

このマルクス主義には多くの労働者階級の人々が影響を受けました。
著しく貧富の差が生まれる資本主義体制の中、労働者の間では声高に社会主義が叫ばれました。
それでは、社会主義とは一体どのような思想でしょうか。

社会主義

社会主義が目指すのは全ての人が平等な生き方です。

社会主義思想は資本主義への批判から生まれました。
では、資本主義の社会は、一体いつから歴史に登場したのでしょうか。

資本主義は、イギリスから始まった産業革命によりもたらされました。

産業革命により従来の手工業から機械式の生産方式に変わりました。
大量生産を可能にした機械式の生産方式により、多くの工場が建ち、多くの労働者の手を必要としました。
資本家(ブルジョアジー)達は利益をあげてはさらに新たな工場や機械を揃え、また新たに多くの労働者(プロレタリアート)を雇いました。
自国のみでは飽き足らず、海外に新たな市場を求め、植民地を力づくで手に入れようとしました。
それが帝国主義です。

話は変わりますが、現代日本では週休2日制が定着しています。
労働基準法などにより労働者の権利が守られています。
中にはブラックなどと呼ばれる企業があることも否めませんが、概ね労働者の権利は守られています。
しかし産業革命時には、労働者を守る権利などどこにもありませんでした。
労働者達は劣悪な環境で働き、一生を低賃金で働き続けました。
資本家はさらに潤い、労働者は貧しい生活を強いられました。

労働者達の間では、こんな世の中はおかしいという考えが芽生えていきます。
一部の人間だけが潤い、大多数の人間は貧しいまま一生を終えていく。
そんな世の中の仕組みに異を唱え始めたのです。
それがすなわち社会主義と呼ばれる考え方です。
社会主義は、労働者と資本家との対立から生まれていったと言えるでしょう。

社会主義が目指すのは全ての人が平等な生き方です。
一個人が経営も利益も独占するのではなく、すべては国家に帰属するとするのが社会主義です。
会社も工場も、そこから得た利益も、すべては国家に帰属するのです。
そして国家の管理の下、利益は平等に賃金として労働者に分配されていきます。
これが社会主義思想です。

共産主義

社会主義をさらに一歩進めた考え方に、共産主義があります。
共産主義は言うなればユートピアです。
理想郷です。

社会主義と主張するところは同じですが、共産主義には国家という存在がありません。
人々の間に優劣がないだけではなく、人々の上に立つ「国家」も存在しえないのです。
すべてが平等なのです。

もちろんそこには政府と呼ばれる存在もありません。
そこにいるすべての人が他人を思いやり、平等に生きていく。
それが共産主義です。
社会主義の行き着く究極の場所、それが共産主義だとされています。

しかしながら、歴史上、そのようなユートピアを達成した国家はありません。
あるとすれば、日本のような縄文時代の人々がそれにあたります。
もちろん、本人たちに共産主義の思想などあるはずはありません。

食料の保存もできない当時、狩りや採集で生活していた彼らには、互いを思いやる心がありふれていました。
病気や体の弱い者には、多くの獲物を捕らえた者が与えました。
彼らこそ、国家や政府という考えを持たない、従える者、従う者という関係を持たない、すべての人が平等な生き方、すなわち共産主義的な生き方をしていた人々なのです。
しかし、弥生時代に入り本格的に稲作が始まると、途端に貧富の差が出始めます。
食糧を保存することや、田畑を多く耕せば自分の収穫が増えます。
そこに貧富の差が表れるのは必然であり、人類皆平等の考えはもろくも崩れ去ります。

当時も「怠け者」はいたはずであり、一生懸命働く者は、彼らに施すことを馬鹿馬鹿しくさえ思ったはずです。
そうして「従う者と従える者」との原型が出来上がっていったのです。

共産主義は、「人間の本質を無視した思想」と否定的な意見もあります。
なぜなら人間はその知能ゆえに、進化成長していく生き物だからです。
その進化の過程では、人は必ず集団化し国家を形成していきます。
人間の本質とはそういうものです。
そのように考えれば、人の行きつく先に共産主義は存在しえないのです。
共産主義が理想郷(ユートピア)と片づけられてしまうのも納得できます。

共産主義は、社会主義のさらに一歩進んだ考え方というよりも、むしろ原始的な、人類の後退した姿なのかもしれません。
事実、ソビエト連邦と言う国家は、歴史上初の社会主義国家でしたが、やがて立ち行かなくなり崩壊してしまいます。
中国なども社会主義国家でしたが、やはり経済的には行き詰まり、経済面だけ資本主義スタイルに切り替えています。
思想は素晴らしくても、現代社会には適応できない社会主義思想。

それもやはり人間の本質が進化・成長にあるからなのです。

社会主義の限界

もし、あなたが一生懸命働いたとしても、あなたの給料が仕事をしない人達と一緒だとしたらどうでしょうか?

よほどの人格者でもない限り、馬鹿馬鹿しく思うはずです。
それが結局社会主義国家の発展しなかった理由です。

会社や工場は国家に帰属し、利益も国家に管理される。
管理された利益は平等に国民に分配される。
あなたが生活弱者ならば大いに恩恵を受けることでしょう。
しかし、あなたが健常者であり、真面目に働く人間であればあるほど、社会主義のシステムは馬鹿馬鹿しく思えてくるのです。

さらに社会主義の下では経済の発展は望めません。
資本主義の下、競争意識の中で企業は競い合い、独自の新製品、技術を提供してきたのです。
各人が個性的なファッション、生活スタイルで活動できるのは資本主義経済の中で生きているからです。
国家が全てを管理する社会主義システムでは、国民に必要最低限の物しか与えられません。
もちろん、ファッションや所有物が全てではありませんが、社会主義体制の中では各自が個性を発揮することも難しいのです。

しかしながら資本主義にも悪い面も多々あります。
前述したように極端な貧富の差や貧困層への救済方法です。

資本主義と社会主義
どちらにもメリットデメリットがあります。
大切なのは常に弱者側に立った物事の捉え方です。

このサイトを通してお伝えしていることはただひとつです。
歴史は、ただ学ぶだけではもったいないのです。
歴史を学び、現代の諸問題にどう向き合っていくか、そこが肝心です。

ここまで資本主義と比較しながら社会主義についてお話ししてきました。
2つの思想が全く異なるものだと理解して頂けたと思います。
長くなりましたが、社会主義を理解した上でロシア革命を学ぶことがもっとも効率が良いのです。

労働者たちが社会主義理想を掲げ、立ち上がったのがロシア革命です。
そして、ロシア革命により、歴史上初めての社会主義国家が誕生しました。
それがソビエト社会主義共和国であり、その共和国が集まり成立したのがソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)です。

社会主義を理解していただいた上で、後編ではロシア革命と社会主義国家の成立へお話を進めます。

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