おもしろすぎる古事記の世界⑤
前回は、縄文時代の謎と三貴子の登場でした
暴れん坊のスサノオは、神々によって地上に追放されてしまいました
スサノオが降り立ったのは出雲の地です
いわゆる出雲系神話につながっていくスサノオの物語
古事記の物語では、出雲の国の繁栄をアマテラスが譲り受け、アマテラスの子孫が大和の地で即位します
初代天皇の神武天皇誕生です
日本の礎を作ったイザナギ、イザナミ
その子孫であるアマテラス、ツクヨミ、スサノオ
彼らにより日本という国が作られ統治されていく物語
それが古事記です
一見解読が難しい古事記
しかし、物語を天皇誕生の歴史、そしてその神聖さを著しているものと解釈すれば、パズルのピース合わせのように理解が深まります
それではご覧ください
三貴子を民族と捉える
いったんここで話を整理しましょう
古事記や日本書紀のわかりづらいところは、いったいどこまでが創作であり、どこからが現実なのかと言う問題にあります
これは諸説ありまして、一概には言えないのですがスサノオやツクヨミを縄文末期の渡来人、つまり外国からの移民者と見ればシンプルに古事記が読み解けてきます
あくまでも私の見解ですが、縄文時代のはじまりこそイザナギ、イザナミの登場です
ここに日本という国の礎を築きました
1万年以上も続く縄文時代
イザナギ、イザナミが登場してからスサノオの追放までを見てみますと恐らく縄文時代に、一部の縄文人は大陸に渡っていったのではないかと思います
最近の研究データでは、縄文人は高度な航海技術を持つ海洋民族だったという説があります。
そのように考えれば、一部縄文人が大海原をかけめぐったことは容易に想像できるでしょう
中国からインドにかけて渡り、そして朝鮮半島から舞い戻った民族なのです
ツクヨミが大陸に渡り、月氏国、大月氏国の租になっていったことは前回の記事で記したとおりです
スサノオ、ツクヨミ、アマテラスは個人の神様というよりも、別系統の民族(ルーツは同じだが)を指すと見ると、古事記の内容はしっくりくるのです(あくまで個人的見解です)
縄文初期、イザナギ、イザナミを祖とする縄文人が海を渡り、縄文末期に渡来人として日本に戻ってくる
それら渡来人こそが、ツクヨミ、スサノオです
アマテラスは天皇の系譜ですから、縄文初期から日本に居続けた民族です
天皇の正統性を主張するために古事記は作られたと思うと、すべて丸く収まりそうです
つまり、古事記とは、「世界は日本から始まっているのであり、いったん世界に人類が拡散するがまた日本に戻ってくる」という、超日本主義的な内容になっているのです
ある意味、人類の始まりがアフリカ起源説を覆す内容でもあります
いや、覆すというよりもアフリカ起源説の方が後から古事記の内容をゆがませたと言った方が適切かもしれません
実際、竹内宿祢(たけうちすくね)から伝えられている正当竹内文書の口伝によると、世界の始まりは日本であったとされています
竹内宿禰と言えば西暦84年、つまり1世紀という古に誕生した人物です
それほど昔から超日本主義的思想を持つ人物がいたのです
単なる思い付きでしょうか?
いえ、確固たる確信があったが故の主張だと私は考えています。
縄文時代の一万数千年
やはりここには何かありそうです
スサノオの物語
アマテラスに追放されたスサノオが、ヤマタノオロチを倒したという物語は一体何を意味するのでしょうか
恐らくスサノオが朝鮮半島から日本に舞い戻った(渡来人として)折には、既に日本は縄文末期で小さな集団、もしくは小国家が国内に点在している状態だったのではと思います
つまり弥生時代の始まりです
スサノオが追放されたのちたどり着いたのが出雲の国です
出雲は朝鮮半島からは目と鼻の先の位置にあります
そこへ渡ってきたと解釈すればがってんがいく話です
そしてそこには既に別の集団がいたのです
これがヤマタノオロチに例えられている人間たちです
スサノオとヤマタノオロチ
いったん古事記の内容に戻ります
地上に追放されたスサノオはしばらく歩いていると、川のほとりで泣いている娘と老夫婦に出会いました
老夫婦の名は、アシナヅチ、テナヅチ、娘の名はクシナダヒメということでした
スサノオが泣いている理由を聞くと、
毎年、ヤマタノオロチがやってきては、一人ずつ娘を食べてしまうとのことでした
アシナヅチ、テナヅチには娘が八人いましたが、あとはクシナダヒメだけとなってしまったこと、そして今年はクシナダヒメが食べられる番だと言うのです
不憫に思ったスサノオは、ヤマタノオロチを退治する代わりにクシナダヒメを嫁にくれと言いだしました
スサノオが天の神、アマテラスの弟であるとわかると、アシナヅチ、テナヅチは恐れ多いながらも喜んでクシナダヒメを差し上げましょうと約束しました
とは言うものの、ヤマタノオロチも並みの怪物ではありません
ホオヅキのような、真っ赤な目、頭が八つ、尾も八つ、それはそれは巨大な大蛇です
まともに戦ったのではさすがに分が悪いと思ったスサノオは、アシナヅチに命じて酒をたっぷり造らせました
いよいよやってきたヤマタノオロチは、準備してあった酒を飲み始めました
すっかり泥酔してしまったヤマタノオロチはその場で眠りこけてしまいました
すかさず八つの首を切り落としたスサノオは、オロチの尾の中に眠っていた剣を手にしました
その剣は、草薙の剣(くさなぎのつるぎ)という見事な剣で、あまりに見事なのでスサノオは剣をアマテラスに献上しました
草薙の剣は三種の神器の一つです
スサノオは、こうして出雲の国に宮殿を建て、クシナダヒメを娶り、この地を統治していきます
神話の中でも出雲の国を舞台に語られる出雲系神話はここに始まります
スサノオとクシナダヒメは多くの子を産みました
その末の子が須勢理姫命(スセリヒメノミコト)です
出雲神話のはじまり
ヤマタノオロチを倒したスサノオ
これは、出雲の地に到達したスサノオ(渡来人)が、先住民(恐らく弥生人)を討ち果たした描写でありましょう
あくまでもアマテラス(天皇の系譜)とつながりがある者が、日本を統治していく様を描いていると言えるでしょう
この後、スサノオは大国主(オオクニヌシ)に出雲の地を託しますが、国譲りの儀式でオオクニヌシはアマテラスの子孫に出雲を譲ります
日本は天皇の統治によりひとつになっていくことを示しているのです
古事記の中のサイドストーリー、それが出雲神話です
因幡の白うさぎ
出雲神話を語るうえで外せない人は大国主(オオクニヌシノミコト)です
オオクニヌシは、その出自が謎とされている人物です
一説ではスサノオの子孫とも言われていますが定かではありません
オオクニヌシは、若い頃はオオナムチと呼ばれていました
オオナムチは八十神(やそがみ)と呼ばれる多くの神々からいじめられていました
八十神(やそがみ)は、オオナムチの異母兄弟ということらしいのですが、気性の激しい八十神(やそがみ)達に比べ、オオナムチは、非常に気心優しい若者でした
有名な話で因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)の話があります
一匹のうさぎが、川の対岸に行きたがっていました
そのうさぎは、周りにいるワニを集めてその上を渡り歩いていき、対岸に行こうとたくらみました
ウサギはワニを集めると
君たちの数と、僕たちうさぎの数を比べたいから数を数えさせておくれ
と言い、対岸に向かってワニを並ばせました
その頭の上をピョンピョン飛び越えながら
一匹、二匹・・・と数を数えていきます
そしてとうとう対岸にたどりつうところまで来たときに
バカだなあ数えるなんて嘘嘘、対岸に生きたかっただけなのさ!
と口が滑ってしまいました
するとワニたちはカンカンに怒り、ウサギの皮をびりびりと引き裂いてしまいました
その頃、八十神達は、稲葉の国で美しいと噂の八上姫命(ヤガミヒメノミコト)を嫁にもらおうとやってきました
オオナムチは八十神達の荷物持ちです
八十神達が通りがかると、先ほどの白うさぎがいるではありませんか
しかし、皮が剥がされ血だらけ、ひどい有様でした
うさぎを見かけた八十神達は
海水に浸かり、潮風に吹かれるとたちまち傷が癒えるぞ
と嘘の情報を伝えました
うさぎは言われたとおりにすると、良くなるどころか激痛が走り飛び跳ねてしまいました
八十神達は大いに笑いこけました
気の毒に思ったオオナムチは、うさぎに伝えます
今度は真水でよく体を洗い、蒲(がま)の穂の花粉を塗ると良い
と教えました
そのとおりにしたうさぎは、すっかり元のように白い毛が生え、元気になりました
うさぎはこのことを八上姫命(ヤガミヒメノミコト)に伝えました
話を聞いたヤガミヒメは、八十神達の求婚を断り、オオナムチとの結婚を決意しました
その話を聞いて怒ったのは八十神達です
怒った八十神達は、オオナムチを殺そうと計画を立てます
難を逃れるためにオオナムチは、根の国を訪れます
スサノオとの出会い
根の国にいるのはスサノオです
そしてオオナムチはスサノオの末娘、須勢理姫命(スセリヒメノミコト)と出会います
須勢理姫命(スセリヒメノミコト)はとても美人で気が強く、そして嫉妬深かったようです
オオナムチとスセリヒメは、会うや否やお互い惹かれあったようです
スサノオのところに案内されたオオナムチはあらゆる試練を課されます
蛇やムカデのいる部屋に通され、一晩をしのぐなど、常軌を逸した試練ですが、ここはスセリヒメの知恵も借りてなんとか試練をクリアします
次に、スサノオは、矢を遠くまで射ると、その矢を探して戻ってくるようにオオナムチに命じます
オオナムチが矢を探していると、周りは火に包まれてしまいました
絶体絶命でしたが、今度はネズミが地面の中のがらんどうになっているところを教えてくれて、そこに身を隠しやり過ごしました
とうとうオオナムチはスセリヒメと共にスサノオの元から脱出を試みます
スサノオが寝ている時のことです
オオナムチは、スサノオの長い髪をいくつにも分け、樽の木にしばりつけ身動きを取れないようにしました
オオナムチとスセリヒメの大脱出劇の始まりです
スサノオはその後、二人を追ってきましたが、諦めがついたのか大声で叫びます
オオナムチよ!これよりお前は大国主命(オオクニヌシノミコト)と名乗り、俺の跡を継ぐがよい!
こうしてオオナムチは、スセリヒメを娶り、大国主命(オオクニヌシノミコト)と名を改めて出雲の国を治めることになります
こうして見ると、スサノオはただの嫌がらせではなく、出雲の国を任せられる器があるかどうか、オオナムチを試していたと言えそうです
こうして大国主の国造りが始まります
ちなみに大国主は、八上姫(ヤガミヒメ)と結婚したばかりでは?という疑問があります
実際、そうなのですが、スセリヒメは非常に嫉妬深く、その嫉妬深さに恐れをなした八上姫(ヤガミヒメ)因幡に帰ってしまったとのことです
大国主は生涯、多くの女性と結婚しています
今でいうイケメンだったのか、その優しさからか、プレイボーイな一面があったのか
大国主の社(やしろ)である出雲大社が縁結びの神社と呼ばれる所以は、この大国主のモテ男っぷりからきています
スサノオが作った国を明け渡す
オオクニヌシはまったく部外者なのでしょうか
それともスサノオの子孫として、国を託されたのでしょうか
いずれにしても、オオクニヌシは国造りが非常にうまかった
あまりの国造りの上手さに、とうとうアマテラスが乗り出してきます
出雲の地が欲しい!と
次回はいよいよクライマックス
出雲の国譲りから神武天皇誕生までのお話です