欧米列強と帝国主義






















清と朝鮮は長らく朝貢(ちょうこう)関係にありました。
漢の時代から中国周辺諸国の支配者たちは、中国皇帝と朝貢関係にありました。
朝貢とは中国の皇帝に礼を尽くし、貢物(みつぎもの)を贈ることです。
皇帝に臣下の礼を尽くし、皇帝からその支配者たる地位を認めてもらう。
中国は古くから文明の発達が早く、相当な国力がありました。
その中国に認めてもらうことは周辺諸国の支配者たちの念願でもありました。
日本も奴国(なのくに)や邪馬台国(やまたいこく)などが中国と朝貢関係にありました。



欧米諸国がアジア進出を試みる中、当然ロシアもアジアを目指します。
やがて日本へ進出してくることになれば足掛かりになるのは朝鮮半島です。
そこをロシアに占領されてしまっては日本にとっては一大事でした。
日本は朝鮮を近代国家化させ、外国に対抗できる力をつけさせることでロシアの脅威を防ごうと考えました。
そこで明治政府は天皇の名の下に再三に渡り朝鮮へ開国を進めました。
ところが朝鮮は断固として拒否します。
朝鮮にとって臣下の礼を尽くすのは、朝貢関係にある清の皇帝のみです。
日本の天皇に従う気はありませんでした。
さらに当時の日本は近代化を推し進め、西洋化を図っていました。
自国の文化を捨て、西洋化を図る日本。
自国の文化を大事にする朝鮮からすれば理解できない行動だったのです。







その後も政府は朝鮮へ開国を要求しました。
そこで政府は軍艦を朝鮮半島に近づけ、朝鮮に圧力をかけました。
そこで武力衝突が起きます。
これを江華島(こうかとう)事件(1875年)と言います。
この江華島事件を口実に、翌年日本は朝鮮と条約を結び、力で朝鮮を開国させました。
これが日朝修好条規(にっちょうしゅうこうじょうき)です。
条約の内容は、朝鮮側に領事裁判権を認めさせるなど、不平等な内容でした。






自国以外の地域を管理下に置くことを「植民地化」と言います。
先住民がいる場合は、その者達も支配下に置き、自国の法律に従わせたりします。
欧米諸国は植民地で安く原料を仕入れ、自国の技術で製品を作りその植民地で売り裁き利益を得ていました。

日清戦争(にっしんせんそう)
西ヨーロッパを中心に産業革命が始まり、資本主義が発達しました。
資本主義経済は利益がさらに利益を生みます。
しかしそのためには多くの原料供給地、そして市場(しじょう)が必要です。
そのために欧米諸国が競い合い奪い合ったのが植民地です。
植民地は主にアフリカやアジアでした。
世界は帝国主義の名の下、欧米列強によって分割されていったのです。
この欧米列強とは主にイギリス、アメリカ、フランス、ドイツそしてロシアです。
ロシアが南下してアジア進出を目論むのは目に見えていました。
そのため日本は朝鮮半島に固執したのです。
朝鮮を近代国家化させ、ロシアの日本への進出を朝鮮半島で阻止する。
それが明治政府の狙いでした。





ヨーロッパを横断できるロシアの鉄道。
それがシベリア鉄道です。
ロシアは広大な国です。
広大ゆえ、多くの国と隣接し、いついかなる時もまとまった軍事力を整える必要があります。
シベリア鉄道は短時間で大量の兵を輸送出来る手段でした。
そのシベリア鉄道が朝鮮半島付近まで延びてきていたことは日本にとって脅威的でした。



条約改正の道











1886年イギリス船ノルマントン号が和歌山県沖で沈没し、日本人乗客全員が水死した事件が起こりました。
本来なら船長には厳罰が下されます。
しかし、イギリス領事館はイギリス人船長に軽い罰を与えただけでした。
領事裁判権を相手国にだけ認める不平等条約。
この事件をきっかけに、不平等条約を改正すべきと言う強い日本国民の意見(世論)が高まりました。
これがノルマントン号事件です。
日本国民は怒りに沸きました。
その怒りの中、富国強兵と殖産興業により日本は国力高めていきました。
そして1889年の大日本帝国憲法発布により、近代国家の仲間入りを果たします。
こうした日本の動きに対して、イギリスの日本に対する関心は大いに高まりました。
日本をただの島国ではないと睨んだイギリスは、日本を利用しロシアの脅威に備えようと考え始めました。
朝鮮半島に南下するロシアを日本とイギリスで挟む。
その日本とイギリスの利害が一致することになります。


イギリスが日本に近づいたのは、まぎれもなく日本が近代国家として世界に認められた証拠です。
1894年、日英通商航海条約を(にちえいつうしょうこうかいじょうやく)を結び、領事裁判権の撤廃に成功しました。
これをきっかけに他の国々とも領事裁判権の撤廃に成功します。
関税自主権の回復までには至りませんでしたが、日本が目指す近代国家の仲間入りは、すぐそこまで迫っていました。


